
この記事は遺言書作成前に推定相続人調査が必要な理由について。
推定相続人調査とは、相続で言う所の相続人調査と同じです。
被相続人(遺言書作成者)の出生から最後までの戸籍を集めることです。
相続人調査については、別記事で解説しております。
ご興味のある方はこちらもご覧頂けると幸いです。
この記事では遺言書のプロである行政書士が、なぜ文案作成の前に必ず相続人調査を行うのか?
その具体的な目的と、この調査が将来の相続トラブルをいかに予防するかについて、具体的なエピソードを交えながら徹底的に解説します。

遺言書と聞くと、自分の財産を誰にどう分けるかを書き残すものというイメージが強いです。
本当に価値のある遺言書は、単に財産を配分するだけでなく、残された家族が争うことなく、スムーズに故人の想いを実現させるための未来への設計図でなければなりません。
多くの方がご自身の考えを紙に書けばそれで終了だと思いがちです。
本当に大事なのは書く前の準備で、ここで遺言書の成否を分けます。
個人的には特に重要なのが相続人調査だと思っています。
重要なポイントは3つあります。
これらについて弊所の行氏書士が解説して参ります。

まずは、相続人調査を怠ったために起きた失敗例をご紹介します。
Aさんは自分の親の相続で苦労したので、配偶者や子供には同じ苦労をさせたくないと思い遺言書を作成しました。
Aさんは配偶者と子供が1人います。
遺言書には妻に家と生活費として銀行預金、子供には有価証券と車を相続させると書きました。
遺言執行者は子供を指名しました。
(遺言書の内容を実現する役割を負った人)
遺言書がある場合、遺言執行者が居るとスムーズに進みます。
Aさんがお亡くなりになり、相続を実行する段になります。
子供が遺言執行者になり、相続人に遺言執行する旨を通知が必要です。
民法1007条第2項にその旨が書かれております。
第千七条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
引用:E-GOV法令検索、民法
この時に相続人を確認する為、相続人調査を行います。
被相続人の戸籍を辿ると、家族が誰も知らなかった前婚と前婚の子供Dが居ることを知りました。
自営業をしていたAさん。
高齢になり、ご自身の財産を円満に分けたいと考えました。奥様はすでに他界しており、子どもは長男と次男の二人。
財産と事業はすべて長男に引き継がせ、次男には生前贈与で渡しているから大丈夫だと判断し、ご自身で手書きの遺言書を作成しました。
亡くなった後、遺言書が開示され、相続人の調査を行ったところ…
父Aに認知した婚外子Cさんがいました。
Cさんは長男や次男とは疎遠で、家族の誰もその存在を知りませんでしたが、法的にはCさんは父Aの子であり、れっきとした相続人です。
上記どちらの事例も家族が把握していない相続人が居たこと、新しく登場した相続人のことを考慮されない遺言書であったことが問題です。
法定相続人であるBさんの名前が一切触れられておらず、Bさんの遺留分(相続人が最低限受け取れる権利)が侵害される形になってしまいました。
結果、Cさん、Dさんから遺留分侵害額請求が起こり、財産から多額の現金を支払うことに。
さらに、相続人間で話し合いが必要になり、相続手続きは長期化し、家族間の関係も悪化してしまいました。
Aさんが作成した遺言書は、Aさん自身の想いを書いてはいるものの、誰が相続人であるかの確認を怠ったために、トラブルの種をまいてしまったのです。
相続人間で大きな揉め事が生じた場合は、裁判沙汰になることが多く、弁護士費用を始めとした費用も多額になる傾向が多いです。
相続人トラブルは弁護士先生の専門分野になります。
ここに書いた事例は仮定の事例ではございますが、相続人調査があれば予防できた可能性があるケースです。

行政書士などの専門家が遺言書作成のお手伝いを行う場合、文案を検討する前に各種調査を行います。
この部分を怠ると後のトラブルの芽になる可能性があるからです。
(その時には遺言者(作成者)は居ないので問題が大きくなりがちです)
遺言書作成前に遺言書調査が必要な理由
上記内容を掘り下げて解説いたします。
遺言書のメリットは遺産分割協議書が不要なことにあります。
相続手続きで一番大変なのは相続人同士のお話合いです。
スムーズな時はスムーズですが、トラブるときはトラブります。
遺言書が有効に使えるためには、事前準備が本当に大切です。
法的に存在するすべての相続人を知ることが大切です。
上記のエピソードの様に遺留分を持つ推定相続人が漏れていると、後のトラブルや煩雑なお話合いが必要になります。
認知した子、養子縁組をした子、異母兄弟代襲相続人など、ご本人が忘れている、あるいは知っていても家族が知らない潜在的な相続人の存在を洗い出します。
これが本当に大切です。
遺言の内容が特定の相続人の遺留分(兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる、最低限の財産取得分)を侵害していないか確認します。
確認するためには、遺留分を持つ相続人を知ることが重要です。
遺留分を持たない人へは通知と連絡だけで済むことが多いですが、そうでない場合は遺言書作成時に考慮することが増えて参ります。
遺言書の大半は遺留分を侵害する内容が多くなりがちで、ここは難しい問題です。
(遺言者の考えが強く反映されるため)
基本的な対策としては、侵害を最小限に抑える文案を提案したり、あえて侵害する遺言書を作る場合には、付言事項としてその理由を丁寧に書き残す、または予備的な代償金の支払条項を盛り込むなどの対策を講じます。
(生命保険を活用する方法もございます。)
遺言書は作成して終わりではなく、執行(実現)して初めて意味があります。
遺言書が有る場合でも、相続関係者全員の戸籍が必要になるシーンがございます。
遺言執行者がいる場合、相続人全員に執行通知と完了通知が必要になります。
また法務局の遺言書保管制度を利用している場合、保管された遺言書情報を取り出す際に戸籍が必要です。
(保管サービスを利用した時は、原本では無くデータに証明書を付けた物が交付される)
執行時に相続関係者全員の戸籍があると、再度の取り直しや取り直す際の手間と時間が軽減されます。
遺言書作成前の相続人調査は一見地味な裏方作業に見えますが、実は遺言書の効力と円満な相続を保証する最も重要な工程です。
相続人調査無しでも遺言書は作成できますが、後々の事を考えると戸籍調査は重要です。
大切なご家族に、争いのないスムーズな相続という最高の贈り物を残すために、ぜひ専門家である行政書士に相談し、適切な相続人調査に基づいた、万全の遺言書作成に着手されることをお勧めします。
以上が遺言書作成と相続人調査についてでした。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

行政書士やまだ事務所 所長
行政書士 山田 和宏
日本行政書士会連合会 13262553号
大阪府行政書士会 6665号
申請取次行政書士(大阪出入国在留管理局長承認)
大阪府行政書士会 国際研究会会員
大阪府行政書士会 法人研究会会員
大阪府行政書士会 本会相談員(身分系業務)
大阪府行政書士会 旭東支部 無料相談員(城東区役所担当)
【大阪府行政書士会より表彰】

【ご依頼者さまから頂いたお手紙】

【適格請求書発行事業者】
インボイス登録済
番号:T1810496599865
【専門分野】
相続手続き(相続人調査、相続財産調査、遺産分割協議書、各種名義変更)
終活支援(遺言書作成、任意後見制度など)
国際結婚や永住許可など身分系在留資格のサポート
年間相談件数は、500件を超える。
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